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NHK大河ドラマ2010年代

NHK大河ドラマ[平清盛]をみて

投稿日:2012-12-29 更新日:

2012年の大河ドラマ「平清盛」が最終回を迎えました。ここ何年かの大河ドラマの主人公は単純バカな正義の味方ばかりで辟易していましたが、ダークな部分も描いて見せた今年は、いくらかマシっちゃマシだったのかも知れません。けど、歴史時代劇の面白さってものを十分にご存じなさげな脚本家サンが執筆なさったという点ではこれまでと似たり寄ったり。話が薄っぺらぺらで、焦点もボヤけっぱなし。この一年も欠伸をこらえての試聴でした。

派手な演出でごまかしか

「平清盛」には、歴史上の大事件や有名なエピソードが多数盛り込まれていたにもかかわらず、悲しいぐらいワクワクできませんでした。最近の大河ドラマ全般に言えることですが、登場人物たちが歴史上の人物として生ききれていないんです。ハッキリ言って、あれでは単なる駒か記号として動いているだけ。だからシーンがいつもブツ切りで、まるで歴史教養番組中に流れるイメージ映像を寄せ集めたかのよう。私としては、登場人物たちの思惑や、ぶつかり合う経緯を、もっともっと多角的かつ緻密に、そしてダイナミックに見せて欲しかったのですが。号泣発狂しんみりアニメチックな装い派手な小道具・・・パッと見の演出でその場だけ盛り上げられても、何のこっちゃです。イメージ映像と感傷で埋められない時間は、回想意味不明の友情物語なんかに充てられていたのも、例年に同じ。今年は双六と「遊びをせんとや生まれけむ」の唄が、しつこいの何のって。どれだけ時間を持て余してんダ。他に描くべきシーンが山ほどあるでしょ。おそらく脚本家自身、歴史時代劇なんて何をどう描けばいいのか、ホントに分からないんだろうなぁ。

知性皆無、常にストレート

ドラマの中の清盛は、事あるごとに「武士の世をつくる!」と口にしていました。清盛が武士の地位を上げたいと思い、一門の繁栄を望んでいたことは確かでしょうけど、あまりに単純な目標を何度も繰り返されると、何だか情けなくなりました。何の為に武士の世を作りたいの? 武士が一番になれば満足ってこと? 次第に清盛がアホに見えてきましたよ。「公家や寺社の権威を武力で凌駕する」だとか、「海上交易で国をつくる」だとかいう風に、どんなときもビジョンで夢を語ろうよ。ドラマでは頼朝が清盛の意思を継ぐという設定だったから、「武士の世をつくる」などと敢えて分かりやすい表現にしたのでしょうか。清盛の目標に限らずですが、「平清盛」ではセリフの中身も言い回しも常に直球。下々の者ならまだしも、奥ゆかしさや教養があるはずの天皇家や公家の人々ですら、身も蓋もない会話をしていて興ざめでした。これは、「分かりやすい」をモットーとする、NHKの意向によるところが大きそうですね。勘弁して欲しいです。

清盛の魅力を描けず

今回のドラマでは主人公のダークさも見せていた点が悪くはなかったと先ほど述べましたが、一方で、平清盛の魅力って一体何なのだろうと分からなくなってしまいました。数々のスゴい事を成し遂げたようではあるけれど、強引野蛮で、いかにも成り上がり者的な印象。主人公がこんなでは、物語としては何だかビミョーです。本来ドラマが分かりやすく描くべきは、主人公の魅力ではないんでしょうかね。明確なビジョンとズバ抜けた行動力を持ち合わせた清盛を時代が待っていた!、もしくは、清盛が現れて閉塞した世の中を打破した!というような、スーパーヒーロー的存在感をもっと前面に押し出しても良かったのでは。また、後の世のように必ずしも天皇が一番!という訳でもなかったこの頃において、早くも清盛は天皇を守るという大義名分を掲げて行動していました。保元・平治の乱や、応保元年の後白河院の企等々、どんな場面においても姿勢がブレることがなかったというのは、清盛のカッコ良さの一つだと私は思いますが、ドラマでは清盛の行動基準がいつも曖昧でした。白河院の御落胤説も、清盛が常に天皇側に着いていることの動機として活用すれば、試聴者の共感をより獲得できただろうに。清盛は白河院の血をひく魔物だ、モノノケだ、なんて騒ぐだけでは、御落胤説の無駄遣いです。まぁこんな感じで、清盛という人物に対して好意を抱きづらかったのが残念。

2005年大河ドラマ「義経」の足元にも及ばず

抱えこんでしまった欲求不満は今年中に何とかしておこうと、忙しい年の暮れだというのに、2005年の大河ドラマ「義経」の総集編を一気に見てしまいました。平家が出てくるドラマの録画って、そんなに沢山は持ってないんで、とりあえず。で、つくづく思いましたよ、「義経」って、本当にマトモ。平家の栄枯盛衰が非常に丁寧に描かれています。「平清盛」よりも平家を堪能できるって、どういうことなんでしょ。清盛はじめ、子や孫、妻たちの一人一人に至るまで、圧倒的な存在感を放ち、偉大過ぎた清盛が亡くなる際の、試聴者に与える喪失感もスゴい。諸行無常の響きもありまくり。「平清盛」の平家一門なんて、この真逆ですものね。個性の描きわけがロクになくて、息子たちも一部、誰が誰だかよく分からずじまいだったし、一門が一堂に会したって威厳のないことといったら中学生の学級会のよう。清盛の死は平家にどう打撃を与えたのか謎のままで、いきなり平家が滅亡してしまったのはビックリでしたからね。それから、「義経」での頼朝は、流人時代から冷静沈着。勢力関係など日の本を俯瞰しています。政治家の素質が垣間見え、いずれ平家にとって大きな脅威となるであろうことが伝わってきます。一方「平清盛」に出てくる頼朝はといえば、蛭ヶ小島では毎日ウジウジ泣いてばかりの情けないお坊ちゃん。政子に尻を叩かれて心を入れ替えた途端、いきなり見事な政治手腕をバリバリふるい始めました。何だコイツ? 本物のモノノケは頼朝か? 「義経」では、歴史ドラマとして最低限描かれて当然であろうことがちゃんと描かれており、ただそれだけで私は感激し、気持ちが満たされたのでした。

脚本家にも得意・不得意がある

「平清盛」について、ここまでボロクソ言った後に今更ナンですが、実は買いたいところもあります。試聴者を楽しませたいという意思や、脚本家の個性を感じました。平氏と源氏の対比、エピソードの辻褄合わせ、源氏物語や和歌や舞、ドロドロの男女関係、さりげない笑い等々。歴史が描けない分、何か別のもので穴埋めをしなくてはと頑張ったんだろうなぁ。でも肝心要の部分がスッカラカンだと、努力はむなしいばかりで、逆に痛々しくて。念のために言っておきますが、「平清盛」が駄作だからといって、この脚本家に脚本家としての才能がないとは思っていません。朝ドラ「ちりとてちん」は、私にはとても面白かったから。そういや、こんなこともありました。好評を博した1996年の大河ドラマ「秀吉」の脚本家は、後に朝ドラ「天花」の脚本を手掛けましたが、こちらは不評でした。要するに、脚本家にも得意・不得意のジャンルがあるということです。いくら人気があっても、歴史無知である脚本家にオリジナル大河を書き下ろさせるなど、到底無茶な話なのです。もうホントにホントに疑問なのですが、原作をつけてあげないのはどういう理由からなのでしょう。定評のある歴史小説が土台にあれば、脚本家も安心してその実力を発揮でき、物凄く面白くて個性的な作品に仕上がる可能性が高いのに。

低視聴率の要因は

「平清盛」は、大河ドラマ史上最低の試聴率を記録したそうですね。NHKはその要因を、登場人物の人間関係が複雑過ぎただとか、時代背景がマイナーだったとか、映像が暗かっただとかいうことで片づけようとしているようですが、私には、はぁ?って感じです。いい加減、そもそものストーリーに全く魅力がないことに気づいて欲しいものです。複雑な人間関係も、馴染みのない時代も、陰気な画面も、話が面白いなら大いに結構!

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