2011年に放送されたNHK・BS時代劇「新選組血風録」が、地上波で再放送中です。昨年感想を書きそびれたので、この機会に。原作は司馬遼太郎の同タイトルの小説。この小説は1965年と1998年にもドラマ化されており、今回は三回目。オリジナル要素を取り入れたり、若手俳優を起用したりして、「新選組血風録」がとてもフレッシュな雰囲気になって帰ってきました。
人間味あふれる主人公たちの哀れ
物語の主人公は、原作と同じく回ごとに代わります。歴史的事件と重ね合わせながら、その回の主役隊士の動向にスポットが当てられています。タイトルの通り、大抵誰かが血に染まって亡くなってしまうんですよね。みんな本当に人間臭く懸命に生きているんだけど、時代や運命や立場などに翻弄されてしまって。毎回共通して漂っている空気は、「切なさ」や「哀れ」でしょうか。
控えめな配役で物語が際立つ
NHKの新選組ということで、大河ドラマ「新選組!」のイメージが邪魔をしてか、脚本キャストの地味さに初めはちょっと戸惑ってしまったりもしました。が、いったん入り込んでしまえば抜け出せないオモシロさ。なによりもまず隊士達の人生ありきなんです。で、そこに隊の規則やら事件が絡んでくるという。新選組に身をおいた人々の現実って、リアルにこんな感じだったんじゃないかと思えてくるんですよね。メジャーとは言い難い俳優サンも結構出演していて、度々登場しているわりには、なかなかお顔と役柄が一致しない人達もいたんですが、この手のドラマのキャストは、むしろ地味目の方がストーリーが際立って、ちょうど良い気もします。
各話をつなぐ工夫
原作と最も大きく違う点は、土方歳三のラブストーリーが入っていること。メインストーリーの邪魔をしないよう控え目な分量で時間が割かれており、初回から最終話にかけてゆーっくりと進展。各話ごとに完結している物語の中に少し連続性を持たせたり、殺伐としたムードを和らげたりしていて、ウマいなぁと思いました。あと、第二話と最終話は原作にない完全創作の物語で、第二話はとてもしっくり馴染んでいました。ちょっと残念だったのは、天満屋事件から函館戦争までを超駆け足で扱った最終話。ストレートかつ派手な盛り上がり方がどことなく大河ドラマ的。最終話だけを単独でみるなら、これをホントに大河化して欲しい!と思うぐらい悪くないのですが、全体で通してみると浮いている感じがします。土方の死なせ方に「新選組血風録」らしい工夫があれば。まぁでも、すごく良い作品であることに違いはなく、過去にドラマ化された2作品と比べてみても、同じ原作でありながら、作り手によってこうも別物に仕上がるものかと、感心してしまいます。
土方歳三は永井大
このドラマで土方歳三を演じているのは永井大。彼ってこんなにステキだったっけ? 繊細さと色気を併せ持った「鬼の土方」にベタ惚れしちゃいました。私のなかでは、永井大=「特命係長・只野仁」の森脇幸一だったのですが、「新選組血風録」で彼の魅力を再発見。今後もっともっと時代劇に出てほしいものです。それから私のお気に入りは、加藤虎ノ介の山崎烝。朝ドラ「ちりとてちん」でもそうでしたが、陰がある、関西弁のクールな男をやらせたら、彼の右に出るものはいないのではないでしょうか。そして、近藤正臣の鴻池善右衛門。2010年の大河ドラマ「龍馬伝」で、中途半端な脚本のためか、訳のわからない山内容堂役をやっておられましたが、ここでやっと「大物」を見せてくれました。
殺陣シーンだけでも楽しめる
見所は、手に汗握る、ド迫力の殺陣。様々な流派入り乱れての稽古や斬り合いのシーンがこれでもかというほどふんだんに盛り込まれています。そのカッコ良さ、凄まじさにもう大興奮! 殺陣シーンだけでも一見の価値アリです。