NHK大河ドラマ「秀吉」

NHK大河ドラマ1990年代

NHK大河ドラマ[秀吉]をみて

投稿日:2012-05-08 更新日:

NHK大河ドラマ「秀吉」を1996年当時にみていたときは、主人公・豊臣秀吉に扮した竹中直人の、竹中直人節炸裂のオーバーアクションな演技に、こんな大河ってアリなんだろうかとビックリ仰天したものでした。けど、抜群に楽しく、こんな大河もアリ、アリ、大アリ!だと大歓迎もしたものでした。強烈だった秀吉はもちろんのこと、秀吉以外の主要人物についても、いまだにハッキリと記憶に残っていて、私にとってはインパクト特大な作品です。ストーリーもとても分かりやすくまとめられており、是非もう一度みたいとずっと願ってやまなかった「秀吉」。先頃やっとDVD化され、テレビでも初めて再放送されました。16年も待たせるなんて、遅すぎです!

信頼のおける脚本とスピーディな展開

久々にみることのできた「秀吉」は、はい、やっぱりメチャメチャ面白かったです。何だか、想像していた以上に。きっと私がまともな大河ドラマに飢えに飢えていたせいなんでしょうけど。やはりきちんとした原作(堺屋太一「秀吉~夢を超えた男~」「鬼と人と」「豊臣秀長」)がついていると違います。脚本家サン(竹山洋)も歴史時代劇や歴史群像劇ってものを熟知なさっているんでしょう。ちゃんと押さえるべきを押さえた、歴史のお勉強ができる大河ドラマです。脚本に安心感を持てるのは、ホント嬉しい限り。昨今の大河ドラマが時間をもて余したようにチンタラしているせいか、「秀吉」の展開が異常にはやく感じました。まるで正月の大型時代劇みたい。秀吉の一生を描くには圧倒的に時間が足りないとばかりに、最初から気持ちがイイぐらいにトントンと話が進みます。

「人間」を魅せる

面白い作品というのは、決まって「人間」の描き方が上手なんですよね。「秀吉」もそうで、信長のもとで出世していく頃の、夢と情に溢れた秀吉と、天下人になってから変わっていく秀吉の描き分けが実に見事。朝鮮出兵の途中で最終回を迎えてしまったのが残念だったのですが、秀吉の人生を見せてもらった満足感は十分に得られました。秀吉以外の人々についても、それぞれが主人公として成り立ちそうなほどに、一人一人の心の機微や生き様、他者との関わりが非常に細やかに描かれています。中でも、秀吉の弟・秀長や北政所(おね)、明智光秀などを、これほど丁寧に扱った作品はそう沢山はないように思います。多くの人の辞世の句が登場するんですが、こういうドラマではそれがすっごく重みがあって、ホント泣けます。

死なせ方が上手い

「秀吉」でのクライマックスは、なんといっても本能寺の変。渡哲也扮する織田信長と、村上弘明扮する明智光秀は主役級で扱われており、とても盛り上がります。私個人的には、村上弘明・光秀があまりに魅力的すぎて大好きだったので、あぁ、ついについに謀反を起こしてしまうのね~、あぁ、三日天下なのね~と、さも初めて知った出来事であるかのようにショックを受け、切なくなってしまったり。光秀謀反の動機は、怨恨以外に黒幕説などもビミョーな具合で取り入れられているところがナイスです。ちなみに秀吉の中国大返しについては、石田三成がそれを可能にしたという設定。本能寺の変や山崎の戦いが終わると、何だか「秀吉」自体が終わったしまったような虚脱感に襲われかけたのですが、すぐさま次の展開に移り、引き続き目が離せませんでした。それから「秀吉」は、人の死なせ方がこれまた上手いんです。特に千利休や石川五右衛門の死を扱った回は素晴らしい。己の存在を示すべく、自ら死を望む利休や五右衛門、それを悟って死に場所を与えてやる秀吉・・・大河ドラマではこういう大物同士の、命懸けの駆け引きだとか友情だとかをみたいんですよね。

大河ドラマとしての方向性は

ところで、ふと思ったのですが、NHKサンが今の大河ドラマで目指している方向って、実はひょっとしたら、この「秀吉」と同じなのではないかな、と。歴史にやたら詳しいオジサマ仕様の渋い時代劇ではなく、むしろ歴史に馴染みのない若い人向けに、娯楽色の強いホームドラマにしようとしているのでは。「秀吉」が今どきの大河ドラマと傾向が似ているなと思う根拠は、まず母子、夫婦、兄弟など、ファミリー内の話が非常に多く出てくること。他にも、戦闘シーンよりも人の会話を最優先してみせていることや、反戦を訴える場面が多いこと、それから、最終回に皆で仲良しこよしをして終了すること・・・など。似ているとはいっても、もちろん出来栄えに天と地ほどの差がありますけど。「秀吉」では、予算の都合かどうかは知りませんが、戦国ものにしては戦闘シーンがやや少なく、戦場でも殆どが会話。主人公が調略を得意とする秀吉ですから、そのやりとりこそが戦なんですね。ビジュアル頼りではなく、脚本力で勝負しています。そして、「秀吉」中で反戦を訴える役は、主に秀吉の母・なかが担当。百姓の出だからこそ持ち得た感覚と推測できるし、説得力もあるので、不自然さはありません。なかは物語終盤で朝鮮出兵に異を唱えるのですが、その唱え方が徹底している分、秀吉の異常行動っぷりが上手く強調されています。それから最終回、秀吉が開いた北政所との結婚35周年記念パーティで、家康やら三成やら利家やら秀次やらが一堂に会します。秀吉亡き後の展開をほんのうっすらと匂わせてはいるんですが、とりあえず皆で秀吉と北政所を華やかにお祝いしていて、そこに時々懐かしい回想シーンなんかも入ってきたりするものだから、小っ恥ずかしいぐらいに大団円。最終回らしすぎる最終回です。けど最後の最後になって、秀吉の辞世の句にある「夢のまた夢」とかけて、この結婚記念パーティが、いや秀吉の人生すらも、秀吉の夢なのかと、視聴者を惑わせるところが何とも心憎いんですね。

まぁ正直言うと、「秀吉」にもいくらかアラがあって、どうも気になるということも多少あったのですが、全体的に大変良くできている作品なので、あえて文句は書かずにおきます。キライなヤツは袈裟までキライだけど、好きなお方なら少しの欠点なんて許しちゃう・・・ってな、感じで。もしまだご覧になっていない方は、是非完全版でどうぞ!

パーフェクトな配役ダ!

主な出演者は次のとおり。豊臣秀吉:竹中直人:ハイテンションで熱演。彼は声もイイですね。織田信長:渡哲也:威厳ありまくり。この人以上に信長が似合う人はいません。明智光秀:村上弘明:この光秀は歴代大河の中でピカ一です。北政所(おね):沢口靖子:ヒロインが本当に似合います。「足利尊氏」に続いて、二度目の主役の正室。豊臣秀長:高嶋政伸:スゴくイイ役どころ。「足利尊氏」に続いて、二度目の主役の弟。なか:市原悦子:はまり役! 千利休:仲代達矢:あのお顔でいつも無表情。独特な雰囲気。足利義昭:玉置浩二:頼りなさげで孤独な将軍を怪演。石川五右衛門:赤井英和:演技はともかく見た目はグッド。石田三成:真田広之:「足利尊氏」の主役も登場。佐吉(石田三成の少年時代):小栗旬:「天地人」の前はここで子供だった! その他、竹中半兵衛:古谷一行。黒田官兵衛:伊武雅刀。蜂須賀小六:大仁田厚。柴田勝家:中尾彬。前田利家:渡辺徹。滝川一益:段田安則。丹羽長秀:篠田三郎。徳川家康:西村雅彦。本多正信:宍戸錠。浅井長政:宅麻伸。斎藤利三:上條恒彦。安国寺恵瓊:中条きよし。市:頼近美津子。美(明智光秀の母):野際陽子。ひろ子(明智光秀の妻):有森也実。茶々(淀):松たか子。吉乃(信長の側室):斉藤慶子。まつ(前田利家の妻):中村あずさ。竹阿弥(なかの夫):財津一郎。森蘭丸:松岡昌宏。おたき(石川五右衛門の妻):涼風真世 などなど。・・・改めて書いてみると、何、このキャスト。豪華すぎてコワイ。

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