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NHK大河ドラマ2010年代

NHK大河ドラマ[龍馬伝]総集編

投稿日:2010-12-30 更新日:

幕末時代劇を見ていると、大抵の場合、龍馬暗殺には少なからずショックを受け、落胆してしまうもの。なのに、龍馬が主人公で、しかも一年がかりで放送されたNHK大河ドラマ「龍馬伝」においては、こうも心が動かないなんて。どころか、不謹慎にも、斬られてくれて、やっと終わったとホッとしてしまったりなんかして。大政奉還の回や最終回にも感想を書こうと思っていたのですが、もはや批判する気すら起こらず、放送終了からひと月が過ぎてしまいました。昨日、今日と「龍馬伝」の総集編の放送がありましたので、一応この機会に久々にして最後の「龍馬伝」の感想等を。

総集編は、4部構成で各部一時間。本編のダイジェスト版の間に、出演者による龍馬ゆかりの地めぐりや、視聴者が選んだベストシーンなどの特別コーナーを織り交ぜた内容でした。過去の大河ドラマの総集編も、ドラマの前後に出演者の座談会を入れたものなどが放送されたことがありましたが、今回の形式は初めて。放送期間約一年という長編モノでしたが、中身があまりにスッカラカラカラ、まとめると僅か3時間になってしまい、企画物でも挟まないと格好がつかなかったといったところでしょうか。

「龍馬伝」に物申す

以前、「独眼竜政宗」の感想記事の中で、「独眼竜~」を絶賛する傍ら、最近のNHK大河ドラマに対する苦情を述べましたが、「龍馬伝」においても思うことは悲しいぐらいに全く同じ。重複で申し訳ありませんが、「龍馬伝」を見終えた感想として、あえてここでも書かせていただきます。歴史上の大事件と登場人物の扱い方がとにかく中途半端過ぎます。テキトーに有名人と有名事件を登場させつつ、とりあえず平和を礼賛する主人公を描けばOKなんでしょ?みたいなノリで、まったくもって軽薄。主人公の人道的な姿で視聴者の感動を誘いたいようだけれど、脚本の力不足のせいで、マイペースで単純な思考回路の持ち主にしか見えない。その他の歴史上の有名人たちや主人公をとりまく主要人物たちも、キャラクター設定が表面的で、人間としての中身が薄い。歴史上の大事件を扱うにしても、彼らの不毛なやり取りでは、そこに至るまでの経緯が十分に描き切れず、突然降って湧いたような出来事にしか見えない。様々な人間たちの魅力がいっぱい詰まった群像劇を描こう、主人公の壮絶な人生を熱く骨太に描こう、我が国の歴史を興味深く描こう、といった気概がみられない作品が、大河の主流となる気配が感じられ、寂しい限り。

三谷幸喜氏曰く

そういえば、「新選組!」の脚本家・三谷幸喜が、連載中のエッセイの中で、「龍馬伝」について触れていました。「『龍馬伝』は、完全無欠のヒーローの龍馬を、あくまでも正面から堂々とヒーローとして描き切った。自信と覚悟がなければ出来ないことだ。(2010年12月3日 朝日新聞・夕刊『三谷幸喜のありふれた生活535』より)」と、エッセイの前半では「龍馬伝」をとりあえずベタ褒め。かわって後半では、「龍馬伝」も「新選組!」と同じようにフィクションを多く取り入れていたのに、「龍馬伝」が「バッシングを受けていないのはなぜだ? 世間の目がちょっと温か過ぎやしませんか?」と不満をもらしています。「新選組!」バッシングの理由は、結局のところ「脚本家の人間性の差」であるかも知れないと、オモシロおかしく自虐でまとめているのが三谷サンらしいのですが。私は三谷サンの脚本は好きな方で、「新選組!」もお気に入り大河の一つです。坂本龍馬を主人公にした「竜馬におまかせ!」(三谷幸喜脚本・1996年・日本テレビ)なんて、ふざけ過ぎもふざけ過ぎ、放送当時は「新選組!」の比にならないぐらい、世の中からメチャクチャに批判された作品ではありますが、これも私には結構面白かったです。歴史上の人物にも歴史上の出来事にも、しっかりと関心と理解と敬意を寄せている上で、計算し尽くしながら最高のおふざけをやらかし、視聴者を思い切り楽しませようとしているのが伝わってくるからです。とかく「真面目」は得をし、「ふざけ」は損をするもの。「龍馬伝」はパッと見の真面目さが、支離滅裂で歴史無知な脚本の欠陥を隠す役割を果たしており、明らかに得をしています。歴史を題材にしたエンタメとして、完成度が本当に高いのはどちらなのか、分かる人にはちゃんと分かるでしょう。

本編よりも感動的な旅企画

総集編の話に戻りますが、総集編第一部・第二部では後藤象二郎役の青木崇高が高知を、第三部・第四部では岩崎弥太郎役の香川照之が長崎を旅するコーナーがありました。青木崇高は武市半平太の墓前に立った際、カメラに向かってコメントすべきが、感極まって落涙。言葉を失います。神社を後にする段になって、漸く口にできたのは、「志をもって生きたいですね」という言葉。神社に向かって、「有難うございました」と深々と頭を垂れていました。一方、長崎を訪れた香川照之は、こう語っていました。「(実際に長崎に来てみると、)一年間やって、やりきれなかったという思いが強くなった。」「(弥太郎と龍馬がやろうとしたことは、)もっと大きなものだったろうし、もっと厳しいゲームだった気がする。」 幕末を生きた人たちに思いを馳せる青木崇高と香川照之の姿が非常に印象的でした。この旅企画、本編よりずっとヨカッタぞ。総集編だけでなく、毎回やってくれても良かったのに。

自らベストシーンを選ばせる

ところで同じく総集編に盛り込まれていた、視聴者の好きなシーンのランキング。これは一体何ぞや。自らこんな企画をするNHKがとにかくキモく、またオツムが弱いように思ったのは私だけでしょうか。本来、制作側からすれば、精魂込めて作り上げた全てのシーンに思い入れがあって、視聴者にはそれら全てのシーンを良かったと言って欲しいはず。もしくは、全体の流れあっての場面場面を、バラバラに切り刻んで良いの悪いのと言ってくれるな、ちゃんと全体を通して見てくれというのが、真っ当な望みではないかと私は思うのですが。民放の特番で、「感動の名場面集」などと題して、多数のゲストを招いてワイワイガヤガヤと、昔のドラマやアニメのワンシーンをランク付けすることがありますが、あれって、あくまで視聴者の立場の人間が、ただ勝手無責任に言いたい放題しているだけですよね。作った者自らが、どのシーンでもいいから一部を抜粋して人気投票にかけてくれと望んだわけではありません。総集編中のこのランキングコーナー、私からすれば、ホント、アホらし~・・・という内容でした。幕末を扱ったドラマとして、心に残るシーンが一つもなかった私が、まぁ、もしそれでも強いて好きな場面を言うとしたら、とりあえず高杉晋作初登場を挙げるでしょうか。舞を終えた芸者のお元に、「こっちへ来い」と言ったときの伊勢谷友介があまりにカッコ良くて、体がトロトロにとろけちゃいましたから。でもこれって、伊勢谷友介が高杉晋作であろうが、白洲次郎であろうが、どうでもいいんです。そのときの伊勢谷友介がステキだった、それだけ。こんな風に物語や役柄とは無関係に、好みの役者にただ萌えたというだけでシーンを選ぶ視聴者が多勢いたとしても、制作者のプライドは傷つかないどころか、喜んでいる節さえあります。シーンをランク付けするコーナーを自ら用意するなど、この作品の程度が知れるというものです。

ただ惜しむらくは

初回を除き、やたら不平不満ばかり言ってきた「龍馬伝」でしたが、脚本以外は素晴らしかったのではないかと実は一応思ってはいるのです。映像も、音楽も、配役も。だから、ただただ勿体なく、悔しい!! 脚本だけかえて、再度作り直してくれ!! 我が愛しの坂本龍馬が主人公となる大河ドラマは、次はいつ作られるのでしょうか。30年後?40年後? 長生きせねば・・・。

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