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BSフジ[かぐや姫 本当の物語]をみて

投稿日:2020-12-29 更新日:

放送は年に一回で、時期もまちまちという気まぐれ番組ながら、今年も事前に情報をつかんで視聴できました。今年は、「かぐや姫 本当の物語」(BSフジ・2020年12月26日放送)。2018年の「岡山で観た。本当の桃太郎伝説!」、2019年の「本当の浦島太郎伝説!」に続き、藤井フミヤさんによる昔話の謎を探る旅シリーズの第3弾です。
日本史や民話に関心があるとのフミヤ氏。お若い頃のちょいとチャラいイメージのままだと意外な感じもしますが、近年は伊勢神宮式年遷宮の奉祝コンサートを初め、各地の神宮などで歌っておられるし、『鎮守の里』という遷宮イメージソングも作っておられることから、むしろ、さもありなん、か。フミヤ氏のゆるいムードが心地良いこのシリーズ、地味ながらマニアックでなかなか面白いんです。今回もとても良かったのでご紹介します。

竹取の翁は本当にいた!?

ヒロインの名をとって「かぐや姫」というタイトルで親しまれている「竹取物語」は、日本最古の物語とされています。今回はその「竹取物語」に隠された謎を巡る旅。奈良県北葛城郡広陵町にある讃岐神社からスタートです。
「宜しくお願いします」と、フミヤ氏はまず本殿にお参り。この方は神社での立ち居振る舞いがいつもキレイです。今回は黒ずくめのファッションがミュージシャンらしくて格好いい。
フミヤ氏が最初に訪れた奈良県の広陵町は、かつて「さぬき」と呼ばれていたそうで、讃岐神社はこの「さぬき」の土地の長が祀られているとか。
「竹取物語」の冒頭に、「竹取の翁」の名が「讃岐造(さぬきのみやつこ)」であると記されているのを覚えておいででしょうか?
「今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。名をば、讃岐の造となむいひける。」
ほら、古典の授業でやりましたよね。
番組によると、竹取の翁は朝廷に竹細工を納めるために讃岐国から移住してきたとの伝承があり、朝廷の祭祀を司っていた忌部(いんべ)氏であるとのこと。つまり「かぐや姫」に出てくるお爺さんは、朝廷と強いネットワークを持つ、実在する人物であった可能性が高いということなんですね。 ふむふむ。
更に「古事記」を紐解くと、なんでも開花天皇の子孫に「かぐやひめ(迦具夜比売命)」という名の姫がいて、垂仁天皇の后であるとの記載があるとか。そして「竹取の翁」と思しき「さぬきのたりねのみこ(讃岐垂根王)」の名もあり、「かぐやひめ」とはおじと姪の間柄であることが分かるのです。ほうほう。

かぐや姫に求婚した貴公子たちの正体

そして益々興味深いのは、物語中でかぐや姫に求婚する5人の貴公子たちです。彼らは壬申の乱で活躍した実在の人物がモデルと言われており、この5人のうちの3人は実名のまま登場しています。残る2人は架空の名前にしてあるものの、そのモデルが誰なのか、物語の読み手に推測させるような記述があります。
「石作皇子」は左大臣の多治比嶋(たじひのしま)、そして不誠実な男として描かれている「くらもちの皇子」は右大臣の藤原不比等であろうと。わわわ、藤原不比等ときましたか。不比等って、中臣鎌足の息子として生まれ、天智天皇から藤原姓を賜り、持統天皇のもとで権力をふるった、あの人です。不比等はイヤな奴かぁ。なんだか政治のニオイがしてきます。
と、ここまでが番組開始からわずか10分ほどの内容。ぼけっと観ていたら、いきなりディープで驚かされます。
実は「かぐや姫」の舞台といわれている場所は日本各地にあるのですが、この5人の貴公子たちが暮らしていた藤原京との位置関係を考えると、今回フミヤ氏が訪れた奈良県橿原市の広陵町が最有力ではなかろうか。大和三山を眺めながら、ガイドさんたちとフミヤ氏が楽しそうに語っておりました。

「かぐや姫」の謎を探る旅

求婚した貴公子たちについてもっと深く探るべく、フミヤ氏が次に向かったのが奈良県橿原市の博物館。ここでは日本初の人工都市・藤原京についてのお勉強です。どのような都であったのか。その規模や宮殿の作りは。築いた目的は。また、5人の貴公子たちがどれほどまでに最上級の貴族であったのか、などなど。『TRUE LOVE』でダブルミリオンのセールス記録を達成したフミヤ氏が、貴公子たちの年収を聞いて腰を抜かしていたのも印象的。
そして実際に藤原宮跡地に足を運んで藤原京を体感し、奈良県葛城市の當麻寺(たいまでら)ではかぐや姫のモデル・中将姫の生涯に思いを馳せ・・・といった具合に旅は続くのでした。
番組恒例となったグルメコーナーは、古代食を現代風にアレンジした「“うまし国”大和の万葉会席」。古代のチーズ「蘇(そ)」などを食し、かぐや姫の時代を感じるフミヤ氏でありました。

可能性を楽しむ!

物語中のエピソードがどういった史実と重なっているのか。誰がどういった目的でこの物語を書いたのか。古代史研究家・関裕ニ氏による解説が、今回の番組の要。私も一番興奮しながら聴き入ったところです。
その内容について、ここに書きたくてたまらないのですが、うーん、ミステリーの種明かしをしてしまうようなものなので、いつかまた再放送をご覧になる方のために核心部分はあえて伏せておきます。
いやいや、「竹取物語」、恐るべしですよ。単なるファンタジーかと思いきや、意外や意外。放送時間をもっと長くしてもいいんじゃないかと思うぐらい、深堀りしがいがあるコンテンツです。
あくまで殆どが仮説であり、学術的には「?」な話であることを決して忘れてはなりませんが、ただ、その可能性にワクワクすることで、こんなに古代に親しめるのは最高だなと私は思います。
ということで、早速、関裕ニ氏の著作を一度試しに読んでみることにしました。ネットで探すと、古代謎解き系の書籍がずらり。番組を見た後だとどれも興味をそそられます。今回の番組のベースと思われる、『古代史で読みとく かぐや姫の謎』(祥伝社黄金文庫)をまずは一冊。
いやぁ、古代史も面白い。この日本を日本たらしめているものが見えてきます。フミヤ氏の昔話の旅シリーズは、今後も是非続けていただきたい。「子供の話じゃねーじゃん」(byフミヤ氏)な結末を期待できる第4弾、第5弾も楽しみにしています!

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