江~姫たちの戦国~ アイキャッチ画像

NHK大河ドラマ2010年代

NHK大河ドラマ[江~姫たちの戦国~]をみて

投稿日:2011-12-20 更新日:

やれファンタジーだ、少女漫画だと叩かれ続けた2011年のNHK大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」は、私にとってもやはり首を傾げたくなる作品でした。あの脚本家が手掛けるということで、「篤姫」の戦国バージョンになるのかと思いきや、原作があっただけ「篤姫」の方が遥かにマシだったようです。テンションが全く上がらず、常にダラダラと数週遅れで録画を視聴していたのですが、何とか年内に最終話まで辿り着きました。何だかもう、ただ意地だけで観ていたような。

戦に勝ったら謝罪する

「江~姫たちの戦国~」は、いつの時代の何の話なんだか。戦乱の世だというのに戦の動向については殆どスルーでした。女はあからさまに反戦を唱え、戦後は決まって勝者側が敗者側に謝罪しちゃうんだから、あれでは、お家のために命がけで戦をした男は立場がありませんよね。身内を戦で亡くし、戦を恨み、戦のない世を彼女たちが切に望んでいたであろうことは想像に難くありませんが、だからといって、現代人の感覚をまるごと戦国時代に持ち込んでしまうのは、どうにも違和感がありまくりです。

とにかく恋愛!

「江~姫たちの戦国~」が力を入れて描いているのは結婚。女が嫁ぐときはいつもラブストーリー仕立て。それも陳腐で、昭和臭プンプンの。一番いただけなかったのは、秀吉と茶々の恋愛です。秀吉が茶々を馬鹿丁寧に口説き続け、やがて茶々が秀吉との恋に落ちるまでに、相当な回数を費やしていました。秀吉がどのようにして天下統一を成し遂げたのかについてはそっちのけ、なんていう大河ドラマがかつてあったでしょうか。男は、まるで女に甘い言葉を投げ掛けるためだけに登場しているかのような印象です。

妄想の世界

それから本当に勘弁して欲しかったのが、どこにでも神出鬼没の、くそガキ時代の主人公・江。何故だか懐かしさを覚えるなぁと思っていたら、昔々アニメで見た、ハチャメチャな活躍をする「あんみつ姫」にどこか似ていたからだったのでした。江の中年期、徳川に嫁いでからの苦悩をもっと丁寧に扱うべきだと思うのですが、いつの間にか娘が嫁いでいたり、秀忠の隠し子についてもサラッと流したりなんかして、めちゃめちゃ駆け足。「あんみつ姫」時代に時間を割きすたせいではないのでしょうか。ガキの分際で信長や秀吉や利休らとやたら接触して、エラそうに物申す場面を喜んで見た視聴者なんていないと思うんですけど。

「江~姫たちの戦国~」は、戦国時代の女性がこんな感じで生きていたならステキよね、みたいなノリの軽薄な妄想をドラマ化してしまった感じですね。初っぱなから、あり得んやろー的場面のオンパレードで、何だかもうホントに脱力。回を重ねるごとに私の感覚もマヒしていき、最終回で江が幼い家光と忠長と保科正之を仲睦まじく遊ばせて大奥を作る切っ掛けにしているのを見たって、もはやブッ飛んだりなんかしませんでしたよ。

むしろあっぱれ!

実は私、浅井三姉妹も結構ファンなんですよね。子供の頃に初めて読んだ歴史本が、「淀君」というタイトルの伝記だったんです。三姉妹が浅井と織田の血を守りたいと、母・市の生きざまを手本に誇り高く生きる姿に、それはそれは感動したものでした。なので、これまで大河ドラマ中に浅井三姉妹が登場するだけで興奮したし、期待外れな描かれ方をしたときは落胆したものでした。しかしその期待外れも、「江~姫たちの戦国~」レベルにまで大きくなると、もはや真剣に憤る気にもなれません。いやむしろ、あそこまで堂々と我が道を行く描き方をされると、拍手さえ送りたくなります。どうぞ、お好き勝手にやって下さいな、です。

「江~姫たちの戦国~」の良かった点をあげるなら

ここ数年、私は大河ドラマについて不平不満ばかりをたれてきました。私って何てひねくれたイヤな奴なんだろうと悲しくなってきますね。たまには何か褒めてみろよと自分に対して思わなくもありません。ホントいい加減、愚痴ることにも飽き飽きしていますので、感想の後半は少々気持ちを入れ替え、「江~姫たちの戦国~」のイイなと思えることを探して書いてみることにします。

まず、宮沢りえの淀殿について。終盤になって茶々はキツい性格の女性に豹変しましたが、よっ、待ってました!といった感じでした。雰囲気だけでみたときの宮沢・淀殿が、一般的な淀殿のイメージとドンピシャで感動的でした。北大路・徳川家康と対面している場面なんかも結構絵になっていたし。「淀、散る」の自刃の回では、意外にもグッときて、涙が出ちゃいそうでしたよ。大坂夏の陣を最終回にしちゃえばいいのにと思いました。(あ、また余計なひと言を・・・。)

次に、2011年秋の紫綬褒章をとった大竹しのぶ。彼女の演技は本当にスゴいですね。脚本が脚本なので、台詞があるといまいちだったのですが、(あ、また言ってしまった。)、無言のときの表情が最高。唯一、大竹・北政所だけがリアルな人間臭を放っていました。ベストシーンを選ぶなら、息を引き取った秀吉を静かに抱いていた場面でしょうか。

それから最後に、徳川秀忠のキャラクター設定。クールなツンデレ男なのが、とても斬新でした。きっと作者は、ヒロインの大切なダーリンとして魅力ある男性に描きたかったのでしょう。今までにない秀忠像に挑戦したのはちょっと買ってもいいかなと思います。(もう開き直って付け足しますが)、もっとも、江より六歳も年下だとか、側室を持たなかったとか、関ヶ原に遅参したとかいったエピソードとキャラが噛み合っていなかったのは言うまでもありませんけど。

やっぱり言わせて

・・・頑張って、いくらか褒めてみました。が、やはり感想の終わりに書かせてもらいます。大河ドラマは、堕ちるところまで堕ちました。

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