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NHK大河ドラマ2010年代

NHK大河ドラマ[平清盛]2012年は「ちりとてちん」脚本家

投稿日:2010-08-05 更新日:

NHKは先日、2012年度NHK大河ドラマが「平清盛」に決まったことを発表しました。チーフプロデューサーの磯智明氏によると、テーマは「挑戦」。磯氏曰く、平清盛は「平安貴族による政治体制を壊し、初めて武士による世の中を作ります。家柄や血筋がものを言う平安時代に、実力で栄華を勝ち取り、新たな時代を切り開いたのです。まさに実力社会、武士の世の到来を告げた男」として、常に挑戦し続けた人物を描く、と。

平清盛が登場する大河ドラマ

また平安末期かぁ。2002年から2012年放送の大河を大雑把に見てみると、戦国→戦国(江戸初)→幕末→平安末→戦国→戦国→幕末→戦国→幕末→戦国(江戸初)→平安末といった具合で、戦国と幕末の間に、たまに平安末が紛れ込むパターンが出来上がっているように見えます。主人公が変わっても、一部の登場人物がかぶってくると、どうしてもマンネリ感が出てしまうんですよね。(2003年「武蔵」は異色作でしたが。)それに私にしてみれば、2005年「義経」中で描かれた、宮尾登美子の平家一門が好きだったので、そのイメージをもう少しおいておいて欲しかったりもして。登場人物のキャラクター性と俳優陣の相性も比較的良かったし。NHKさんは、視聴者の心の中にある「作品の余韻」なんてものについては配慮してくれないんでしょうか。扱う時代も人物も他にまだまだ沢山あるでしょうに。未開拓分野に、それこそ「挑戦」していただきたいものです。

2005年「義経」以外に、過去に平清盛が登場した大河は、1966年「源義経」(主人公:源義経:尾上菊之助、平清盛:辰巳柳太郎)、1972年「新・平家物語」(主人公:平清盛:仲代達矢)、1978年「草燃える」(主人公:源頼朝:石坂浩二、平清盛:金子信雄)。あらら、こうしてみると、昔も意外と間隔が近かったんですね。逆に、1978年から2005年までが気持ち悪いほど開き過ぎ。 奥州藤原氏の興亡を描いた、1993年「炎立つ」では、そういえば清盛は全く出てこないんでしたっけね。ペースってものを考えて欲しいなぁ。

「ちりとてちん」藤本有紀氏のスゴさ

プロデューサー殿の「挑戦」はさておき、最も気になるのは原作と脚本。いつからか、キャストへの関心なんて二の次となり、原作者や脚本家の発表にまず恐怖するようになってしまった視聴者は私だけではないでしょう。NHKによると、2012年「平清盛」は藤本有紀氏の脚本によるオリジナル作品とのこと。いやぁぁぁ、オリジナルはやめてぇぇ!!と、つい悲鳴をあげてしまいましたが、そういや藤本有紀氏といえば、あの2007年NHK連続テレビ小説「ちりとてちん」を書いた方ではありませんか。実は私の朝ドラ視聴歴は大河のそれよりも長く、1983年「おしん」以来、一作品もみるのを欠かしたことがありません。(私って、どれだけNHKが好きなんだ・・・) で、私がこれまで見てきた朝ドラ50数作品の中で唯一、DVDが欲しい!完全版で欲しい!!と思わずにいられなかった作品が、その「ちりとてちん」なのです。朝ドラについて書くのは場違いと心得つつ、脚本家・藤本有紀氏の実力を語るため、今回はあえて。

「ちりとてちん」は、若狭塗箸職人を父と祖父に持つ福井の女の子が、大阪に出て落語家を目指す話。大筋だけ見るなら、主人公が仕事も恋も結婚も出産もという、近頃の朝ドラにありがちな、全てを手にする女の半生モノ。しかし、このドラマを他の朝ドラと同列に語れないのは、仕掛けの巧妙さと、その完成度のズバ抜けた高さゆえです。まず、このドラマの最重要アイテムである落語の魅力の伝え方が半端ありません。登場人物たちの落語にかける情熱が非常によく描かれており、加えて、ドラマ中に登場する落語について解説する楽しい劇中劇があったり、更には、登場人物の言動が有名な噺のパロディになっていたりするなど、その面白さといったら落語ファンをも唸らせたほど。落語に何の興味もなかった私なんぞまで、すっかり落語の魅力にとりつかれてしまい、今では落語のCDを数枚所有するまでになってしまいました。また、この「ちりとてちん」の特長として、神業のごとく張り巡らされた伏線があげられます。どんな些細なサイドストーリーも、後々必ずメインストーリーに絡んでくるので、一瞬たりとも油断して視聴することができません。大切な伏線を大胆にカットした総集編など、わざわざ作る意味があるのだろうかと疑問に感じるほど。シーンにはメリハリもあり、コントか漫才のようなシーンをたくさん盛り込んで始終爆笑を誘いながらも、あるときは次の展開が待ちきれないほどドキドキ緊張させたり、泣かせるところはコレでもかというほど徹底的に泣かせてきたりします。そしてドラマの命である登場人物たちは、誰も彼もが魅力的。主人公は超マイナス思考のダメ女という、かつての朝ドラでは有り得なかった設定。相当なチャレンジです。主人公が恋するのは、落語には真面目一筋だけど、天涯孤独な、非常に口の悪いチンピラ風男。万人受けする好青年を好んで出してきた朝ドラにしては、これまたクレーム覚悟のチャレンジです。主要人物はもちろん、ほんの脇役の人物までが、それぞれの強い個性でドラマを盛り上げています。出演者は、現在放送中の「龍馬伝」にも出ているアノ人々。主人公は、「龍馬伝」で千葉佐那役の貫地谷しほり。主人公の恋人は、後藤象二郎役の青木崇高。あと、井上聞多役の加藤虎ノ介も登場。三人とも、「龍馬伝」中よりもはるかに生き生きしています。

ということで、藤本有紀氏による2012年NHK大河ドラマ「平清盛」の脚本に関しては、絶望視はしなくても大丈夫かな、と。 もちろん、笑いと涙の落語物語と、壮大な歴史劇は全くの別物。伝統芸能と歴史の調理方法は相当異なるでしょうが、形はどうあれ、一つのドラマとしてまとまったものを見せてくれる気がします。少なくとも、昨年や今年より見辛くなることはなさそうな。

大河執筆を期待したい脚本家

朝ドラネタついでに言えば、現在放送中の「ゲゲゲの女房」の脚本家・山本むつみ氏も、そのうち大河を書きそうだなぁと思っています。最近の大河同様、近頃はキレイ事オンパレードで、どこか偽善的なムードが漂う朝ドラが多い中、「ゲゲゲの女房」は適量の毒によって視聴者を楽しませてくれる稀有な作品です。また、様々な人間の志や絆、苦悩・挫折・栄光を描くのが上手いし、台詞に含蓄もあるし、古きよき日本語を大切にしているし。センスの藤本有紀氏より、知性の山本むつみ氏の方が、どちらかというと大河向きな脚本家かもという気がしています。山本むつみ氏にも期待大。

ちなみに。2012年「平清盛」と同じく平清盛が主人公だった1972年「新・平家物語」の原作は、吉川英治による同タイトルの、あの有名な歴史小説。そして脚本を手がけたのが、「御宿かわせみ」など多数の代表作をもつ平岩弓枝。吉川×平岩だなんて・・・、スゴい~、スゴすぎる!! 大河ドラマ好きが涙を流して喜ぶような、これぐらいスペシャルな組み合わせで書かれた大河って、もう今後は登場しないんでしょうかねー。

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