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NHK大河ドラマ2010年代

NHK大河ドラマ[龍馬伝]薩長同盟

投稿日:2010-09-13 更新日:

「薩長同盟ぜよ」を別の方言で言ってみると、「薩長同盟だよ」「薩長同盟やで」「薩長同盟だべ」「薩長同盟だっちゃ」って感じでしょうか。「龍馬伝」の薩長同盟に相応しい、実にお気軽なサブタイトルです。想像していたよりも、ドラマではこの同盟締結に時間が割かれていましたが、中身は想像に違わずスカスカ。西郷が下関会談をスっぽかして京へ行ってしまったのは、朝廷が幕府に長州征伐の勅許を下ろさないよう、急遽工作活動をする必要に迫られたからではありません。船に何やら怪しげなニンジャが潜入してしまったので、とりあえず用心のため。京の小松屋敷において、西郷と桂の交渉が遅々として進まなかったのは、話を切り出すのに、薩長それぞれのプライドが邪魔をしたからではありません。立会人の坂本クンの到着を待ちたかったから。ニンジャが出現したとか、主人公は素晴らしい人だから是非待とうだとか、子供向けアニメですら赤面して避けそうなストーリー展開です。一体何が目的でここまで通説に逆らい、話を幼稚化するのでしょう。

「龍馬伝」らしい薩長同盟ぜよ

交渉の場になかなかやって来ない坂本クンは何をしていたかというと、小松屋敷に向かう道すがら、新選組に囚われている岩崎弥太郎を助けに行きたいと駄々をこねているのでありました。この期に及んでもなお、国事よりお友達救出を優先させたいとは、どこまでもマイペースに人道主義を貫く主人公です。それにしても、このドラマは相変わらず暴力がお好き。残酷な拷問シーンによって、緊迫した状況を表現したつもりになっているのでしょうか。上手く用いれば効果的な拷問場面も、登場させる状況と頻度によっては逆効果。もういいよと、ウンザリ。しかもなぜ弥太郎なの?? ムリヤリでも弥太郎を絡ませておけば、弥太郎視点の物語を描いたことになるのだと、プロの脚本家やスタッフが本気で信じているのでしょうか。ドラマ開始早々は、弥太郎から見た龍馬という斬新な設定に、これは面白そうだと私も興味津々でしたが、いざ蓋を開けてみれば、こんな程度。

龍馬は三吉慎蔵に尻を叩かれ、とりあえず小松屋敷に到着。盟約の中身は、長州が薩摩に一方的に助けを受けるものであると、桂は僅かに戸惑いを見せました。すると龍馬は、両藩が仲良しこよしの対等になれる、こんな一文を付け加えようと言い出します。「薩長両藩はまことの心をもって合体し、日本のために、傾きかけちゅうこの国を立て直すために、双方とも粉骨砕身尽力する!」と。ここで桂は何やら感動した様子でアッサリ納得。会談は終了。なんやソレ??! たしかに実際にそういう内容の条文はありますが、長州の冤罪を前提にした六か条は、全てがそれぞれに感動的な内容だと私は思っておりました。何だか意外なところで異様に盛り上がり、しかも意外に簡単にメデタシ、メデタシ。会談にたどり着くまでに、無様なりにも引っ張り引っ張り焦らしたくせに、肝心要の会談はもう終わりですかい? 龍馬の物語で、会談をじっくり扱わなくてどうする?? 薩長連合、ついに叶ったり!、奇説家・龍馬、ついにしてやったり!という興奮が微塵もわいてくることなく、ただ首を傾げたくなるような同盟締結シーンでした。

視聴者を馬鹿にするな

ついにとはいっても、そもそも薩長って、「龍馬伝」ではどうして反目し合っていたんでしたっけ? これは抱いてはいけない疑問なのでしょうか。Season3の初め、薩長の藩士が長崎の料亭で鉢合わせした際、「薩摩ぁぁぁ!!」「長州ぅぅぅ!!!」と、国名を呼び合って互いを罵倒する、非常に分かりやすいケンカシーンがありました。ほら、両者は犬猿の仲なんですよと。だから、この度やっと薩長が仲良くなれたことに、視聴者はしっかり喜ばなくてはいけないよ、反目の理由なんて分からなくても大丈夫だからね、とでもいうのでしょうか。禁門の変の経緯をサラリと流す・・・というより、薩長の思想・立場に殆ど立ち入らずに済ませようとするところが、視聴者の理解度をはなっから信用していないようで、私にとっては非常に不愉快です。

しょーもないところで万事大仰

昨日の放送では、瀕死の重傷を負った龍馬が、ゼェゼェ、ハァハァと痛みもがきながら、盟約の書簡に裏書き。机も用いず、畳の上であんな不自然な体勢で筆をとれば、人に体を支えていてもらわないことには、誰だってヨロヨロするでしょうさ。龍馬が同盟締結の仕上げをするシーンだということで、制作側にしてみれば、ここでも必死に場を盛り上げているつもりなのかも知れません。「龍馬伝」は、政治的な部分は有り得ないほど希薄なくせに、いちいちどこか大仰なんですよね。常に何かがズレまくっていて、まともに見ていると、頭がおかしくなりそうです。政治を描くことを放棄したなら、せめて友情や恋愛をまともに見せる努力をして欲しいのですが、それすら中途半端で。お龍らヒロインと近づいていく過程にしたって、男と女の艶っぽいムードなんか全くありません。見所という見所が一つもないって、もう何だかねぇ~、どういうことなんでしょ、ホント。

昨年の「天地人」に対しても、私は文句タラタラでした。けど今年は、昨年と比較にならないほどの愚痴を言っています。作品の印象の悪さでは、どっちもどっちなのですが、私のイライラ度に差が出てしまったのは、もともとの「好き」や「期待」が影響したのでしょう。私は幕末史が好きだ、坂本龍馬が好きだと、以前から度々書いていますが、付け加えると、主演の福山雅治も結構好きなのです。癖のない王子様的なビジュアルと、低音で男っぽい語り口調、トークから垣間見られる気さくそうな人柄に惹かれ、10代の頃は福山が出ているTV番組を録画したり、ラジオ放送を録音したりする程度にファンでした。最近では、駅のホームにある巨大なビール広告を見て、年齢を重ねて益々ステキになっていくなぁとウットリ思っておりました。「龍馬伝」では、当然ながら、40歳を迎えた福山雅治の魅力を存分に生かした、「カッコ良いオトナによる、大人のための物語」になるだろうと、一人勝手に異常なまでの期待をしてしまっていた訳です。あと、これは時代劇ではないのですが、2007年にNHKで放送された経済ドラマ「ハゲタカ」に夢中になり、主演の大森南朋にメロメロになった私は、大森南朋の「龍馬伝」出演を知って更に喜びました。おまけに演出家まで「ハゲタカ」と同じだとのことで、「龍馬伝」が「ハゲタカ」並の社会派大河(?)となることをすっかり信じて疑わなかった、一年前のアホな私です。

砕け散るイメージ

私が「龍馬伝」をとても気色悪く感じるのは、年齢層の高い、あるいは実力派の俳優陣が主力にも拘らず、登場人物たち及びストーリーがあまりに子供じみているというギャップによるところも大きいのだろうと思っています。見た目が十分に大人な登場人物たちが、あまりに単細胞な言動をするのはイタすぎます。作品によって、演じている俳優サンが随分知的な人に見えることもありますが、「龍馬伝」においてはその逆で、出演者らが非常に哀れ。主演の福山に関して言えば、すぐに大声を出して喚いたり、やたらビービー涙を流したり、短慮で軽率だったり、無駄にエラそうだったり、言動に一貫性がなかったりなんかして、私の中の福山のイメージは今や最悪、地に落ちました。泣きそうです。福山の演技力に全く問題がないとは思いませんが、ファンとしては演技力以前に、彼の魅力を無視し、子供じみた奇妙な役柄を強いる作品にこそ文句をつけたいところ。坂本龍馬ら歴史上の偉人たちの印象だけでなく、福山雅治を初め、好きだった多くの出演者の魅力を木っ端微塵に打ち砕いた「龍馬伝」に、恨みを抱かずにいられましょうか。

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