軍師官兵衛感想アイキャッチ画像

NHK大河ドラマ2010年代

NHK大河ドラマ[軍師官兵衛]をみて 其ノ壱

投稿日:2014-12-28 更新日:

バタバタしているうちに今年もまたろくに更新できませんでしたが、2014年NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」も何とか最後まで視聴できたので、とりあえず感想を書きます。とりあえず、なんて言っている時点で、感想の中身が知れてしまいますね。

「さすがは官兵衛」

戦国時代、主君の参謀を務めた武将が数多くいた中で、「天下の軍師」と称された男・黒田官兵衛が今回の主人公だったわけですが、 「天下の軍師」というからには、その冴え渡る智略と鮮やかな采配を存分に堪能させてもらえるのだろうと当然のことながら期待していました。でも「軍師官兵衛」の官兵衛って、周囲の登場人物たちが「さすがは官兵衛!」などとやたら絶賛するわりには、その根拠が不明で、結局のところどれほど優れた軍師であったのか、私にはさっぱり理解できませんでした。それに官兵衛の人となりが最後までつかめず、感情移入もできませんでした。どうにも物足りず、「軍師官兵衛」も残念ながら私にとっては良い作品だったとは言いがたいです。といってもまぁ、昨今の大河ドラマのように話がトンデモなく荒唐無稽だということもなかったし、イメージ先行の気色悪過ぎる演出もなかったので、かろうじて正統派というか、マシであったと言えなくはないんですけど。

「もしも」を考えてみたかった九州平定戦

まずはまだ記憶に新しい、黒田官兵衛(如水)晩年の九州平定戦から先に触れておきます。一般的に知られているところでは、西軍勢力が多くを占める九州において、官兵衛は破竹の勢いで敵を無血開城に導きながら自軍を増やしていきます。稀代の調略家・稀代の武将ここにありと、官兵衛が健在であることを改めて天下に知らしめた九州戦は、ドラマでも最後の大きな見せ場となるはずでした。が、「軍師官兵衛」では扱いがめちゃめちゃ軽かったですね。具体的な戦いぶりが殆ど分からず、緊張感や高揚したムードのかけらもなし。「天下を狙う」と周囲に豪語しちゃったぶん、戦の終わりがあまりにあっけなく感じられて。最後の最後で官兵衛がただの残念な人であるかのような印象を視聴者に植え付けただけだったように思います。九州平定戦にある程度のエネルギーを割かなかったのは、官兵衛の物語としては失敗だったのではないでしょうか。一視聴者である私からしてみれば、史実として官兵衛が天下を取ることはないと分かってはいても、官兵衛の才能をこれでもかというぐらい見せつけられて、このままいけば天下を取れるかも知れない、いやいっそ取ってもらいたいと心から願わせて欲しいものでした。家康と三成の戦いがもう少し長引いていればと、本気で悔しがりながら、「もしも」を想像してみたかったです。

見応えがあった物語前半

話は遡りますが、そこそこ面白いと思えたのは、「軍師官兵衛」の前半。戦国モノの王道を行く大河が帰ってきたような気配すら感じられました。兵法書「孫子」を度々引用するところも目新しくて興味深かったし、主人公が軍師として成長していこうとする様はとても良かったと思います。冒頭で扱われた、永禄十二(1569)年の青山合戦(龍野・赤松氏との戦い)は素直に楽しめました。ドラマ仕様に史実が多少操作されていましたが、起承転結をくっきりつけながらキレイにまとめられていて、非常に分かりやすかったです。涙ありハラハラありのオーソドックスな展開は好感が持てました。

最初の山場となったのは、織田方の中国攻め。天正五(1577)年から天正六(1578)年にかけての播磨情勢はまるでオセロゲームを見るようでゾクゾクしました。官兵衛の活躍によって東播磨が一斉に織田方になりましたが、突如、播磨の最大勢力・三木城の別所長治が離反したことで、国人領主の殆どが毛利方に寝返り。再度播磨を平定すべく秀吉と官兵衛が三木城攻めを行っていると、今度は摂津有岡城の荒木村重が叛旗を翻し、姫路城の官兵衛たちは完全孤立の大ピンチ──。物語を軟弱化する史実操作はここでもみられたものの、激動の播磨情勢がテンポ良く描かれていて、なかなか見応えがありました。個性豊かな俳優陣の名演のおかげもあって、心情描写が希薄であるという脚本の欠点もさほど気にならず、夢中になって視聴できました。

失速した物語後半

私が面白いと思えた前半は、つまりは官兵衛が軍師として発展途上である頃。未熟な働きぶりでも、やむを得ないと諦めることができました。そして摂津有岡城の土牢から解放された直後は、風貌もすっかりスゴ味を身につけ、見ていて大変ワクワクしたものでした。いよいよこれからが官兵衛の物語の本番!面白くなるゾと。備中高松城の水攻めと中国大返し、うん、仕事っぷりもいいぞいいぞ。でもここは奇抜な策とはいっても、視聴者にとってはもはや有名過ぎて、とてつもなく感動する場面にはなりえないんですよね。制作陣がいくら力を入れたところで、こちらが本当に見たいのは、むしろこれ以降。

ところが脚本家サンは、高松城攻めまでを描いたところで早くも燃え尽きてしまった様子。物語はこの後急激に勢いを失っていきます。あろうことか、重要な戦を描くことを放棄するという怠慢を見せ始めたのだからショックでした。天正十三(1585)年の四国攻め。リアル官兵衛が長宗我部元親の練り上げた壮大な計略を見破り、心理戦に持ち込んで「戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり」を実行した、官兵衛の智略冴え渡る攻城戦──。ドラマ中ではほぼスルー。天正十四(1586)年の九州攻め。宇留津城の残虐な処断を見せしめとしながら、島津方の諸将を軍門に降らせた見事な調略──。ドラマ中では病床にある吉川元春を出陣させる説得に随分と尺をとり、戦場においては、何かを策したという印象づけもろくにないまま、さらりと九州平定完了。この四国・九州攻めの扱い、ヒドすぎませんか? 軍師・黒田官兵衛の物語なんですよ。官兵衛に軍師としての見せ場を用意してあげないなんて、どういうつもりなんでしょうか。「孫子」だって、教えを生かせる場を失って、すっかり登場しなくなってしまいました。

(「NHK大河ドラマ[軍師官兵衛]をみて 其ノ弐」に続きます。)

よく読まれている記事

「メールなどで使ってみたい武士語ランキング」と侍JAPANアイキャッチ画像 1

NTTレゾナント株式会社が、gooリサーチの登録モニター1152人を対象に「メールなどで使ってみたい武士語」について調査し、先日、その結果を発表しました。第1位に輝いたのは、「かたじけない」。続いて、第2位「面目ない」、第3位「しばし待たれよ」、第4位「~でござる」、第5位「参上」、第6位「出陣!」、第7位「けしからん」、第8位「よきにはからえ」、第9位「いとおかし」、第10位「お主」。 武士語は ...

子連れ狼北大路欣也版アイキャッチ画像 2

北大路欣也主演のテレビ時代劇『子連れ狼』は、2002年から2004年にテレビ朝日で放送されました。原作は小池一夫・小島剛夕の同タイトル漫画です。私はリアルタイムで全シリーズをみて大ファンに。DVDの発売を待って待って・・・ついにネットで見つけた、「子連れ狼 DVD-BOX 2008年12月発売予定」の広告。詳しい案内を見てみると、若山富三郎主演の映画バージョンでした・・・うう・・・いいんだけど。今 ...

-NHK大河ドラマ2010年代
-, , ,

Copyright© 戌ノ刻見聞録-AYAMEZUKI- , 2024 All Rights Reserved.