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NHK大河ドラマ2010年代

NHK大河ドラマ[龍馬伝]もうすぐ池田屋

投稿日:2010-05-31 更新日:

光が美しく、映画のように幻想的な映像。個性的なBGM。リアルで迫力満点のセットや小道具。スタッフのこだわりを感じずにはいられない素晴らしい絵と音で、超力作といった印象の、今年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」も早中盤に。ストーリーももちろん素晴らしい・・・はずが、あれ? ね、眠い・・・。まさか「龍馬伝」でもアクビを堪えることになろうとは。第一話に衝撃を受け、そのまま興味を持てたのは初めの数話のみ。龍馬の脱藩の動機は曖昧でよく分からなかったけど、とりあえず国を捨てたSeason2からは盛り上がるか!とちょっぴり楽しみにしていたのに、何だこれは。見た目が斬新でも、脚本のレベルは昨年と殆ど変わらず。過剰な期待をした私がバカでした。初回で脚本のアラを見抜けず、ベタ褒めしてしまった自分が恥ずかしい・・・。

3年B組の雄叫び集団

「龍馬伝」には苦情があり過ぎて、ホントもう何から言っていいのか分からないのですが、とりあえずまず志士たちの描き方について。勝塾は、現代の理系学部の研究室とスポーツ系サークルが合体したようというか。みんな生き生き、和気藹々。思いっきり青春♪してますよね。若者たちが物事に懸命に打ち込むことは素晴らしいんですけど、あんなご時世だというのに、悠長に訓練に明け暮れていることに焦ったり、国を憂えて激しい議論を交わしたり、なんて全くないんですかねぇ。夷狄から日本国を守るという目的で海軍を創設しようとしているのを忘れているんでしょうか。塾内で、たまにそれっぽいことを言うのは金八・勝海舟先生のみで、龍馬は楽しそうに皆とウォーとかワーとか叫んでいるだけで、3年B組の単なるクラスメイトの一人に過ぎないって感じです。何かあっても、「どーしたらええがじゃ」と頭を抱え、無能ぶりを披露するしかない龍馬に、周囲の登場人物たちは何故やたらめったら期待しているのでしょう? 謎です。また、何とかして欲しいのは土佐勤皇党も。武市半平太の主な台詞は、「尊皇攘夷のため」、「大殿様のため」、だけ。こんなお題目、当時なら誰もが言えたような気がするんですが。攘夷派の弾圧が始まってくると、今度は、「自分らは悪いことはしちょらん」ばかり。他に言えることはないのでしょうか。これで武市半平太をカリスマリーダーだ、才人だと思えというのは無理というものです。で、半平太以外の勤皇党員たちはいつも異口同音に、「武市先生!どうなるがですか?!」。先生!先生!と半平太に質問ばかり。あんたら、アホ? なぜこんな集団が、一時でも土佐で権力を握れたのでしょう? なぜ朝廷に取り入ることができたのでしょう? 私が幕末時代劇を好きな理由は、志士たちの国を想う、ちょっと小難しい主義主張を聞くのが楽しかったり、男を男惚れさせるほど格好イイ殿方たちを沢山みられることが嬉しかったりするからでもあるのですが、「龍馬伝」ではその喜びが皆無です。登場人物たちの思想や覚悟を示す描写がスカスカで、勝塾も土佐勤皇党も子供のお遊びにしか見えません。

感傷ばかりの友情物語

「龍馬伝」Season2で描かれているのは、同郷の幼馴染の、麗しき友情。平井収二郎の切腹を扱った回では、龍馬と半平太が、収二郎を思って取り乱します。収二郎の妹・加尾が龍馬によこした手紙の中で、兄は間違ったことはしていないはずなのに、「どうして切腹させられたがですろ。教えとおせ。」なんて言っていましたが、龍馬は、手紙の加尾と同じ疑問を抱いて泣き、半平太は、勤皇党を作らなかったら良かった、収二郎よ、スマンと謝罪。視聴者に薩摩・会津の目論見を知らせもせず、龍馬にただ世の無常を嘆かせるなんて、またまた歴史的背景は軽視で、感傷重視かと溜め息が出ます。ましてや半平太に土佐勤皇党の旗揚げを悔やませてしまうなど、最低最悪。墓場の偉人に失礼極まりないシナリオに怒りすら覚えます。そもそも前触れもナシにいきなり収二郎が功名心にはやって単独行動をとったことが、私にとっては奇怪至極。容堂公にはめられた彼を哀れんであげることもできません。このときのサブタイトルは「収二郎、無念」だったはずですが、収二郎本人は最期に「幸せじゃった」と言っていました。「武士は食わねど~」的な見栄や強がりでもなさそうだし、それなら、「収二郎、本望」でいいんじゃないの? 幕末の志士云々以前に、武士たる者の描き方が杜撰過ぎます。収二郎の死を通して描きたいものもハッキリしません。そしてドラマ中の現在の龍馬は、こともあろうか、追われている岡田以蔵を助けたくて、海軍塾そっちのけで右往左往。なぜ以蔵のことで必死になっている龍馬を数週を費やしてまで描くのか、全く意味不明です。大の男同士が、やたら抱き合ってグズグズ泣いたりするし、クサイ学園ドラマよりもブザマです。脱藩という大罪を犯してまで、龍馬は一体何をやっているのでしょう。一説には、龍馬脱藩の際、次姉・栄が元ダンナから貰った名刀を弟・龍馬に持たせて立派に送り出してやり、後に刀の責任をとって自害したといわれています。「龍馬伝」では栄は初めから存在しなかったことにして、刀は兄ちゃんからのプレゼントだというハッピー逸話に。私は龍馬の旅立ち方に物足りなさを感じていたのですが、今思えば、重たい門出は、甘ったるいお友達ごっこをしに行く龍馬には相応しくないからだったのですね。

なるほど確かに「人は芥子粒のようだ」

脚本は横井小楠の口をつかって、「世の中の流れからみたら、人は芥子粒のようだ」と述べています。この言葉を視聴者によほど重要視してほしいのか、後でまた龍馬に回想までさせています。どうということのない、ありきたりな言葉をわざわざ横井小楠に言わせた上、それをまた大袈裟に扱うところが失笑もの。ドラマ中では誰も彼も、歴史上の大物までもが、吹けば簡単にフっ飛びそうな小物にしか描けておらず、まぁ確かに芥子粒同然ではあるのですが、脚本家がその力量不足を自虐的に皮肉ったのかどうかはさておき、こうして誰かの台詞でドラマを解説したり、まとめたりしなければ収拾がつかないほど、幕末志士たちの物語としてはスウィートでフワフワ、もうメチャクチャです。登場人物たちの志を明確に描き、それぞれ己の道を力強く歩ませれば、志半ばで命を絶つ無念も、頼もしい友を失う悲しみも、視聴者には自ずと伝えられるのではないかと私は思うのですが。ムードや取って付けたような説明で誤魔化す似非無念や似非友情などに、アホらしくて泣けるかって言うんです。

求む!力量のある脚本家

次回、6月6日の放送タイトルは「池田屋に走れ」。これから、池田屋騒動、蛤御門の変、長州征伐と、長州絡みで世の中はどんどん荒れていきますね。長州はもちろん、土佐について、薩摩・会津・幕府について、それぞれの思惑や動向をある程度見せておいてくれないことには、後々の龍馬の偉業もショボくうつってしまいます。龍馬も呑気に陳腐な友情に現を抜かしている場合ではありません。ああ、NHKさん、歴史と人間に対する深い洞察と、幅広く豊かな見識を持った、真に力のある脚本でなくては、折角のあの見事な絵や音が台無し。

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