今からほんの数百年前の江戸に生きた人々と、現代に生きる私達との間には、性に対する感覚にどれほどの差があるのか。それを知る手掛りとして、書店のアートコーナーなどに並ぶ江戸の春本を手にとってみても、露骨な描写に驚いて、覗き見たページを瞬時に閉じてしまうようでは、何かを学べるわけもなく。
江戸の性にまつわる様々な事情
昨秋発行、永井義男の『江戸の下半身事情』では、絵ではなく文字で、その時代のあっけらかんとした性事情を様々な事例を通して分かりやすく伝えてくれています。新書なので躊躇することなくどこでも開くことができました。
人間にとって性の欲求はいつの時代も根本的に同じなのだなと思う一方で、とりまく環境が違うと、あぁ人はこういう行動をとるのか、あぁこういう感覚になるのかと、色々な発見もしました。娯楽が格段に少なかった昔の方が、性がもっと身近で、生活に密着していた様子がうかがえます。同情せずにはいられない暮らしぶり、びっくりしてしまう感覚、思わず笑ってしまう珍事件から同性愛や性同一性障害の話まで、当時の性にまつわる様々な事情を知ることができる一冊です。
現代の性意識もまた、諸々の環境によって築かれているのだと改めて確認すると同時に、これから100年先200年先の日本では何が変化し、何が変わっていないのだろうと、未来にまで興味がわいてきました。