(「NHK大河ドラマ[独眼竜政宗]再放送スタート!其ノ壱」からの続きです。)
常に心が振動
世には、坦々とした地味な日常の中にある面白さを扱った物語がありますが、それは映画や特殊なドラマ向けであって、視聴者が大河に求めているものとはあまり言えません。ましてや、盛り上がる物語にしようとして作られながらも、制作者の技術不足で盛り上がらなかったり、軟弱過ぎてつまらなかったり、なんて低レベルな大河は問題外。やはり大河は、骨太かつド派手であるものが俄然イイ! 超ドラマティックな展開で、どうか私を戸惑わせて、私をめちゃくちゃに振り回してと、Mッ気たっぷりに思うのです。ドラマを見ているときの心の揺れは、例えば「天地人」では、45分の間に一度、震度2ほどあれば上出来な回といえましたが、「独眼竜政宗」では、常に微震を感じている状態で、そこへ震度4~6クラスが数度訪れます。回によっては、超巨大地震・震度10が来て、夜も寝付けなくなるような未曾有の大被害を被ることもありまして。
なぜ心が揺さぶられるのか
大河のような歴史モノでは、ドラマ中に必ず盛り込まねばならない、実際に起きた出来事があります。どんな視聴者だって義務教育を受けていれば、教科書に出てくることぐらいは既に知っているし、マニアともなれば歴史専門家顔負けの知識を持っていたりします。よって大河ドラマとしては、周知の出来事をいかに面白くドラマティックに描くかが腕の見せ所なわけで。確かに「独眼竜政宗」は、秀吉や家康が出てくる戦国劇とはいっても、少々マイナーな地域が舞台であり、多くの視聴者にとっては史実自体が物珍しいというラッキーさがあることは事実です。また、身内の骨肉の争いなど、ドラマを盛り上げるのに持って来いな素材があったりもします。が、それにしても何故こうも45分間常にブルブルブルブルと視聴者の心を揺さぶり続けるのかといえば、それはズバリ、ヤバイぐらいに魅力的な人物たちが物語の主体だから、というほかありません。
「独眼竜政宗」に出てくる人物たちは皆、非常に丹念にデザインされた個性と熱さを持っています。登場人物たちは劇中、それぞれの個性と情熱に基づきながら思考、発言、行動をします。人々の熱く激しいぶつかりあいが、何かしらの事態を招き、次の展開への布石となるという作りになっているこの作品には、フィクションと実際にあった出来事の境目がありません。「史実」へ向かっていく為に計算の上に計算し尽くされたドラマで、「史実」は、まさに登場人物たちが作り出した事実、といった印象を受けます。「独眼竜政宗」は、ドラマで描こうとするものが、あくまで「人間」。魅力溢れる、個性豊かな人物たちが繰り広げる「人間ドラマ」だからこそ、胸の震えが止まらないのです。また、「史実」の部分は勿論のこと、ドラマの大半を占める創作と思われる部分にしても、盛り込まれている場面が、これまたスゴイ。登場人物が強烈なら、シーンも強烈で、視聴者の度肝を抜く場面をよくこうも思いつくものだと感心せずにはいられません。展開のスピードも速く、見ている者にとっては、前のショックを処理し切れないうちに、次の新たなショックが来るものだから、たまったものではありません。一話見終わるごとに、もうホントに疲労困憊。この「独眼竜政宗」をドラマティックと言わずして、何を言いましょう。
昨今の大河ドラマときたら
近頃の大河は、歴史上の大事件と登場人物の扱い方がどうも中途半端な気がしてなりません。テキトーに有名人と有名事件を登場させつつ、とりあえず平和を礼賛する主人公を描けばOKなんでしょ?みたいなノリで、まったくもって軽薄というか、幼稚というか。登場人物の中でもとりわけ主人公は、たとえ戦に勝っても負けても、驕ったり、自信を喪失したり、誰かを恨んだりすることがなく、どんなときでも僕は僕らしく♪ってな調子の人間が多いですよね。人との別れは辛いけど、死んだ人や離れ離れになった人のことを僕は忘れないよ、でも敵だった人と分かり合えたからイイよね、と心優しく、常に前向きで。主人公の人道的な姿や賢人っぷりで、視聴者の感動を誘う魂胆なのかどうかは知りませんが、脚本の力不足で、マイペースで単純な思考回路の持ち主にしか見えないのが悲しいところ。その他の歴史上の有名人たちや主人公をとりまく主要人物たちも、そのキャラクター設定は何だか表面的で、人間としての中身が薄い。歴史上の大事件を扱うにしても、彼らの不毛なやり取りでは、そこに至るまでの経緯が十分に描き切れず、突然降って湧いたような出来事にしか見えないんですよね。濃厚な人間臭さが漂う描写がないせいか、話がサラサラと流れていってしまい、人にもシーンにもインパクトがありません。様々な人間たちの魅力がいっぱい詰まった群像劇を描こう、主人公の壮絶な人生を熱く骨太に描こう、我が国の歴史を興味深く描こう、といった気概がみられない作品が、大河の主流となる気配が感じられ、寂しい限りです。
(「NHK大河ドラマ[独眼竜政宗]再放送スタート!其ノ参」に続きます。)